年末の家の片付けをしている最中に、
「中国の年号が入った急須や茶器が出てきたので、一度見てほしい」
というご相談をいただきました。
今回は、長岡京市にある美術骨董鑑定館へお持ち込みいただいての鑑定となりました。
お電話では
「急須に 大清康熙年製、大明萬暦年製 と書いてある。中国の物だと思うが、価値があるのかわからない」
とのご依頼内容でした。

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中国美術・唐物が注目される理由
近年、中国美術・中国陶磁は世界的に評価が高く、
日本国内でも戦前より「唐物」として中国の陶器や工芸品を大切に伝えてきた文化があります。
特にここ数年は、
日本各地の一般家庭や旧家から掘り出された中国美術の名品が市場に現れ、
一点で数億円の評価がつく例も珍しくありません。
そのため、「中国の年号入り茶器」という言葉を聞くと、
鑑定する側としても自然と気合が入ります。

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実物を拝見しての第一印象ですが
ご予約通りにご来店いただき、机の上に茶器を広げて拝見しました。
結論から申し上げると、
中国の近現代に作られた、いわゆる土産物の茶器と判断いたしました。
私はこれまで、中国の上海や広州などへ何度も足を運んでおりますが、
現地では露店や空港のお土産店などで、
古い年号を記した茶器や陶器が数多く販売されています。
今回のお品は、そうした類のもので、
日本に古くから伝わった本来の唐物とは全く別物でした。

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鑑定の具体的なポイント
今回の鑑定で重視した点は以下の通りです。
• 絵付けが稚拙で、筆致に品格がない
• 急須の蓋が浅く、傾けると簡単に転がり落ちる簡素な造り
• 急須内部の構造に、古作特有の作り込みが見られない
• 私が日頃拝見している康熙年製の真作とは、質感・造形ともに明らかに異なる
いわゆる「偽物」と断定するものではなく、
観光用・土産物として作られた近現代の作品という評価になります。

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日本の煎茶器について
あわせて拝見した煎茶器は、日本製のもので、数は揃っていませんでしたが、
近年の煎茶ブームもあり、
こちらは相応のお値段をお付けすることができました。
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本日の鑑定結果とお引き取り内容
今回の結果は以下の通りです。
• 中国製の近現代・土産物茶器
• 日本の煎茶器
• 盃 数点
以上をまとめてお譲りいただく形となりました。
ご依頼時の期待が大きかった分、
結果としてはお互いに少し残念な気持ちもありましたが、
「私が持っていても意味のない物なので、それで手離せるならありがたい」
というお言葉をいただき、大切に託していただきました。
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骨董品に込められた想いを次へ
「またどこかで、この品たちが大切にされる方の手に渡りますように」
そのお気持ちに、古美術 安尾京栄堂はこれからも真摯にお応えしてまいります。
年末年始の家の片付けや整理の中で、
「価値があるのかわからない」「処分に迷っている」
そんな骨董品・茶道具・古美術品がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。